幅広い工業製品に必須のフッ素材料

フッ素樹脂は耐熱性や耐薬品性に優れ、幅広い用途で使われます。この原料モノマーであるテトラフルオロエチレン(TFE)は極めて反応性が高く、急な圧力変化や温度上昇によって爆発する危険があります。当社はTFEを安全に取り扱う技術を強みとして、TFEを原料とした多様な高付加価値製品を開発してきました。こうしたTFE誘導体は高分子、電子材料、医薬品などの用途で利用され、私たちの生活を支えています。

世界のテトラフルオロエチレン(TFE)誘導体リーディングカンパニーへ

多様な誘導体に展開、ユニークな事業ポジションを構築

当社の前身の1つである東ソー・エフテックは、創業当初からフッ素技術をベースにした多様な製品開発を進めてきました。

一般的に、TFEメーカーの多くはTFEを重合反応のモノマーとして用いてフッ素樹脂やフッ素ゴムなどのポリマーを製造しています。代表的なものはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で、身近なところではフライパンの表面加工などに利用されています。それに対して、当社はTFEを原料とした低分子の製品群であるTFE誘導体を多数展開しているのが特徴です。ニッチかつ高付加価値なTFE誘導体を少量多品種生産している数少ないメーカーとして、当社は世界のTFEメーカーのなかでもユニークなポジション を有しています。

積み上げてきたTFEの安全な取り扱い技術・ノウハウ

当社は1993年からテトラフルオロエチレン誘導体の一種であるC4-DVC6-DVの製造を開始し、ブラウン管コーティング剤の原料として販売していました。

そうしたなか、2013年に自動車部品用フッ素ゴムの添加剤としてTFE誘導体の引き合いがありました。ユーザーの要求数量は当時の生産能力を超えており、製造設備への投資が必須でした。そこで当社は耐熱性と耐腐食性に優れた1m³の高圧耐食反応器を新設し、TFE誘導体の生産能力増強に取り組みました。当時、東ソー・エフテックは液晶中間体の事業撤退やTFEAの売り上げ低迷により業績が急落しており、TFE誘導体を新たな主力製品にしたいという狙いもありました。

TFEは非常に反応性が高く、急な圧力変化や加熱、酸素の混入などが原因で発熱を伴って分解し、爆発するおそれがあります。こうした性質からTFEは社外への移動・輸送が困難であるため、当社はTFEから誘導体までを一貫生産しています。

本事業における当社の強みは、TFEを安全に取り扱う技術を有していることです。当社のTFEプラントは製造時の温度や圧力を低く保てる設計となっており、温度や圧力が危険領域に達しないよう反応条件を制御しています。また、重合禁止剤を添加する、厳密な工程管理で酸素濃度を低減するなどの安全対策を行った上で誘導体を製造しています。

 

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高圧耐食反応器
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プラントの外観

フッ素ゴムの添加物など多様な市場に展開

TFE誘導体の主な用途はフッ素ゴム製造時の添加剤です。フッ素ゴムは耐熱性、耐油性、耐化学薬品性に優れたゴムで、自動車の燃料系で広く採用されているほか、産業機器、航空宇宙向けにも需要が広がっています。当社TFE誘導体で最も販売量の大きいC4-DIをはじめ、その類縁体であるC6-DI、C4-IV、C6-DVなどがこの用途で利用されています。

これらの誘導体は、TFEとヨウ素のテロメリ化(多量化)反応によって製造されます。テロメリ化反応ではC4-DIとC6-DIが同時に生成するため、蒸留分離を経てそれぞれ製品化しています。また、それぞれの末端のヨウ素部位を変換することで、C4-IVやC6-DVを製造しています。

C4-DIはフッ素ゴムの精密合成に不可欠な連鎖移動剤として、C6-DVやC4-IVはフッ素ゴムを高機能化する架橋剤として使用されます。これらの添加によって重合反応を制御することができ、耐熱性や耐薬品性などの狙った機能を持つフッ素ゴムが得られます。

そのほかにも、半導体製造に欠かせないレジスト材料向けの酸発生剤原料として用いられるS-PAG、医農薬品の原料にフッ素を導入するためのフッ素化剤として用いられるFMR-45などを誘導体としてラインナップしています。

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