R&Dトピックス
2026.09.28

1.蓄電デバイスの多様化

 脱炭素社会の実現や次世代モビリティの台頭、再生可能エネルギーの導入拡大により、蓄電デバイスの重要性はかつてないほど高まっています。蓄電技術の多様化も進みつつあり、リチウムイオン一極集中から、用途・性能・安全性に応じて複数の技術が共存・棲み分けする時代が到来しているといえます。企業・研究機関により、コスト、高性能化、安全確保だけでなく、資源的持続可能性(リサイクル性など)といった観点も重視し、新材料やセル設計、モジュール構造のイノベーションに力が注がれている状況です。
 そうした中、リチウムイオン電池の代替候補として注目を集めている蓄電デバイスの一つがナトリウムイオン電池です。ナトリウムはリチウムに比べて地殻中に豊富に存在し、資源偏在が小さいため、コスト安定性や調達リスク回避の観点でメリットがあります。技術的にも、構造はリチウムイオン電池と類似しており、既存の製造インフラを応用しやすいことから、商用化への障壁が相対的に低いといえます。2020年代半ばには中国の大手電池企業による量産化が実現し、他の国々の企業でも続々とナトリウムイオン電池の開発・応用が始まっている状況です。

 

2.蓄電デバイスにおける安全性の課題

 リチウムイオン電池は高エネルギー密度を実現しつつも、有機溶媒(エチレンカーボネート等)を用いるため、外部短絡や過充電などを契機に発火・爆発が起こる「熱暴走」のリスクが常につきまといます。ナトリウムイオン電池においてもリチウムイオンと同じ有機電解液を用いるのが主流であるため、原理的に同様の熱暴走リスクが残ります。したがって、その安全性強化策として、セル設計の高度化、BMS(バッテリーマネジメントシステム)等の対策が施されている一方、本質安全に寄与する難燃性電解液も依然として求められています。

 

3.東ソー・ファインケムの電解液用溶媒

 東ソー・ファインケムは、自社バルク製品であるTFEA(2,2,2-トリフルオロエタノール)から誘導される難燃性溶媒、TFEP[トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート]を高品質で生産する技術を開発済みです1)。

 TFEPは、引火点を有さないフッ素系溶媒であり、フッ素系エーテル等の他のフッ素系溶媒とは異なってLiPF6等の電解質を溶解しやすい性質を有します。このため下表のような様々な組成で電解液を構成することが可能であり、電解液全体として引火点をもたず、蓄電デバイスの本質安全に寄与する組成を構築することができます。

表1 TFEPを含む電解液に対するLiPF6の溶解度

TFEPを含む電解液に対するLiPF6の溶解度

表2 TFEPを含む電解液の引火点測定結果

TFEPを含む電解液の引火点測定結果

TFEPトピックス_構造式

 また、こうしたTFEPを含有する電解液は、ナトリウムイオン電池用の電解液としても優れた性能を示すことが示されています2)3)。

 蓄電技術が多様化を見せる中、「高エネルギー密度」と「高安全性」の相反する課題克服のため、材料、設計、制御、監視、それぞれの側面からのイノベーションが求められています。

 TFEPの製品ページはこちら。詳しい情報やサンプルをお求めの方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

4.引用文献

1)特許5679719号
2)特許6189275号
3)特許6342287号

 



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