R&Dトピックス
2024.05.23

 

 パラスチレンスルホン酸ナトリウム(SPINOMAR® NaSS)は、当社の臭素化技術を活かして製造される機能性モノマー製品の一つです。

 最近、当社はスチレンスルホン酸塩をベースにした新しい高分子両性電解質「PSCa-1」を開発し、この化合物が水溶液中において特定の温度範囲で振る舞いが変わる性質を示すことがわかりました。この振る舞いは、上臨界溶液温度(UCST)型の温度応答挙動と呼ばれます。

PSCa-1

 UCSTは、特定の高分子溶液において、一定の温度以上で高分子が可溶となる温度を指します。つまり、UCST型の高分子水溶液は、低温で相分離し、高温で溶解する性質を持ちます。UCSTは、ポリマーの組成や濃度などの条件によって変化し、この相転移の挙動は、静電相互作用や芳香族環との化学的相互作用によって引き起こされると考えられています。

 UCST型の高分子は、様々な応用分野で利用されており、例えば、温度に応じて物質の分離を制御する分離膜や、温度センサー、そして医薬品や化粧品などの分野での製品の開発に役立ちます。

 当社では、これらの特性を活かし新たな用途開発を進めており、特に、正浸透水処理システムで使用される駆動液としての応用に注力しています。

 膜を用いた水処理においては、逆浸透法と呼ばれるシステムが広く知られています。逆浸透法では、逆浸透膜と呼ばれる特殊なフィルターを使用して不純物や塩分を取り除くことで純水を製造しますが、高圧力を必要とし、エネルギー効率の低さが課題として存在します。当社では、この課題解決のため、従来の「膜+高圧力」の代わりに「膜+駆動液としてPSCa-1の水溶液を適用」することで、エネルギー効率の良い正浸透水処理システムへの応用の可能性を見出しました。 

正浸透水処理システム 正浸透水処理システムは、海水淡水化、飲料水製造、工業用水の製造などさまざまな用途で使用が期待されており、今後、エネルギー効率の良いシステムの開発に向け、当社材料の応用が期待されています。

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