製品情報
2023.11.02

 近年、環境負荷軽減の目的で塗料など様々な用途にて有機溶剤系から水系への切り替えが進む中、水溶性ポリマーの利用が広がっています。
 合成系の水溶性ポリマーには、非イオン型、アニオン型、カチオン型あるいは両性型があります。頻用されるアニオン型水溶性ポリマーとしては、弱酸型のカルボン酸系と強酸型のスルホン酸系があり、弱酸型水溶性ポリマーの代表的なモノマーがアクリル酸です。アクリル酸は、超高分子量化できることから、凝集剤や増粘剤として古くから使用されています。
 強酸型の代表的モノマーとしては、スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)、ビニルスルホン酸ナトリウム(VSNa)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(AMPSNa)があります。これらは、カルボン酸系ポリマーに耐塩性、耐熱性、耐酸性を付与するためのコモノマーとして使用される他、強酸型を主成分とするポリマーは、分散剤、帯電防止剤、凝集剤として使用されています。1),2)

  スルホン酸ポリマーの中でもポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ポリナス®)は、高い熱分解温度とベンゼン環由来の疎水性の特徴を有しています。3),4)
 
図1は、ポリナス(ホモポリマー)のTG-DTA測定結果を示しています。400℃付近まで分解に伴う重量減少が観測されず、有機分子としては極めて高い熱安定性を有することが判ります。1ポリナスのTG-DTA測定結果

 また、ポリナスのもう一つの特徴である疎水性を示す一例として、ここではポリナス共存下でのスチレンの重合反応例について紹介します。
 図2(a)は、少量のポリナスを存在させた水中にて、スチレンを乳化重合させた反応液の状態を示しています。この場合、スチレンの重合反応がスムーズに進行し、安定なエマルションを得ることが出来ます。一方、同じ重合条件下で、スチレンのみ、またはポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム)(P-VSNa)やポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム)(P-AMPSNa)を存在させた場合は、スチレンは殆ど重合せず、不均質なエマルジョンが得られます(図2(b)~(d))。これは、疎水性の特徴を有するポリナスのみがスチレンの良好な重合場を提供したためと考えられます。 

2スチレンの重合結果-1 

 上記の例からも判りますように、ポリナスは疎水性を有する物質に対して良好な親和性・吸着性を示します。このため、ポリナスは各種の水系洗浄剤や分散剤として使用されています。特に同じ芳香族系化合物との親和性が優れており、ポリチオフェン系導電性ポリマーの分散剤機能を併せ持つドーパントとして、あるいはフタロシアニン系顔料の分散剤として使用されています。5 

 東ソー・ファインケムは、こうしたポリナスに関し30年以上に亘る製造・販売実績を有しています。高品質のモノマー(SPINOMAR NaSS®)及びその誘導体に加え、各種分子量を有するホモポリマー及びコポリマーを商品ラインナップし、世界中の様々な分野のお客様に提供するとともに、新たなニーズにも対応しています。

1) 野田公彦;水溶性高分子の最新動向 2015年 株式会社シーエムシー出版発行
2) Zahid Amjad ; Phosphorous Research Bulletin 20 (2006) 165-170
3) C.A.Wilkie ; Polymer Degradation and Stability 63 (1999) 423-434
4) Tsuneo Okubo ; Journal of Colloid and Interface 213 (1999) 565-571
5) Stephan Kirchmeyer ; Journal of Materials Chemistry 15 (2005) 2077-2088

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